薬物依存症と向き合う

2015.06.06 00:10|仕事
弁護士として刑事事件を何年かやっていると,必ずあたるのが覚せい剤事件です。

覚せい剤事件の場合,被害者がいるわけではないため,被害者との示談交渉などがあるわけではなく,正直,弁護活動についても,手を抜こうと思えば,結構抜けると思います。

しかし,被告人が覚せい剤をどうやったら断ち切ることができるのかをきちんと考えていくと,なかなか難しいです(>_<)

覚せい剤を常習的に使っていると,制御がきかなくなり,反省したり,自分の意志を強く持とうとしたところで,脳が覚せい剤の快感を記憶しているので,自分をコントロールできなくなってしまいます。

被告人と面会していると,「もう自分は今回の件でこりたんで,絶対やらないですよ。」というのですが,そんな簡単にやめれるものではないです。

しかし,被告人は,自分が薬物依存症であることを簡単には認めようとしない場合が多いです。

私から,いろいろと説明をしても,「いや別におれの場合は病気でも何でもないし,今後は自分の意志を強く持つんで大丈夫ですよ。」などと言って,なかなか聞き入れてくれません。

しまいには,「何でもうやんないって言ってのに,信用しないすか!?反省してるって言ってんじゃん!!」などと怒り出したりすることもあります(~_~;)

しかも,被告人にとっては,今回の件でどういう刑を受けるのかしか興味がないことも多いです。

「どうやったら刑軽くなります?」「早く外に出れるいい方法ないんですか?」などなどです。

覚せい剤事件に限らず,罪を犯して,すぐに真摯な反省をすることなんて,正直できないと思っています。

しかも,弁護人が被告人と向き合えるのは,多くの事件では,被告人が逮捕されてから裁判が終わるまでの2,3ヶ月程度です。

そんな短期間で,一気に被告人の考えが変わるということは期待できないです。

しかし,この短期間でも,被告人の今後の方向性を一緒に考えることはできると思っています。

覚せい剤事件であれば,覚せい剤依存症というものがどういうものなのか,覚せい剤を断ち切ることは,相当な困難を伴うことを,繰り返し説明して,専門的治療等を受けることの重要性を分かってもらうようにします。

最初は拒絶されても,しつこいぐらいに面会に行き,粘り強く説明し続けます。

専門的治療を行っている病院の資料等を差し入れたりもします。

色々言っても,「裁判で病院へ行って治療するっていえば,刑軽くなります?」という言葉しか出て来ない被告人もいますが,「そこまで先生が言うなら,とりあえず外出れたら行ってみます。」という被告人もいたりします。

しかし,被告人が裁判を受け,刑務所に行ったり,執行猶予で外に出たりすれば,弁護人と被告人との関係性は,そこで基本的に終わります。

刑務所から手紙を出してくれたりすれば,それに返事を出したりはしますが,刑務所まで面会に行ったりとか,そういう時間的余裕は正直ないです。

そうなってくると,今後の被告人の更生を支えるのは,やはり家族などの被告人のまわりの方々になります。

そのため,私は,被告人の家族にもできる限り何度か会って,被告人の今後を話し合うようにしています。

何度も覚せい剤で捕まっているような被告人の場合,私から家族へ連絡しても,「あいつとはもう縁を切ったから,話をしたくない。」とか言って,電話を切られてしまうこともあります(~_~;)

それ以外でいうと,突然息子が覚せい剤使用で逮捕されて,何が何だか分からず,ただただ泣いているお母さんや,やけに刑事事件の手続や裏事情に詳しいお父さんなど,様々です。

いずれにしても,家族の方も,薬物依存症についての理解がないケースが多いです。

そういう場合は,被告人にしたのと同じような説明を家族に対してしたりとか,下記の『家族を依存症から救う本』などを紹介して読んでもらったりもします。

家族の意識が変わり,「絶対覚せい剤をやめさせよう」という強い気持ちをご両親などが持つようになって,被告人と真正面から向き合うようになれば,被告人も病院やダルク等の民間団体へ足を運び,変わっていくのではないかなと思います。

こうした被告人を支援する環境を整えるという活動も,弁護人に求められているのではないかと思っています。

他の手持ち事件との兼ね合いもあり,自分が出来ることに限界はありますが,1人でも,今後の方向性を見出し,薬物を断ち切れる被告人がいれば,うれしいですね(^ ^)



家族を依存症から救う本 ---薬物・アルコール依存で困っている人へ
加藤 力
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職業:弁護士
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